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2020年1月11日 : 相続に伴う空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除とは?
親などから受け継いだ住まいを、そのままにしておくとさまざまな問題を引き起こします。
そのため、将来的に住むことがないのであれば、早い段階で売却も視野に入れて検討してみましょう。
今回は、相続した空き家を譲渡(売却)する際の特別控除についてご説明します。
特別控除の特例とは
総務省統計局の調査によると、平成25年の空き家数は820万戸。全国の住戸の13.5%を占める数です。
空き家が増加した原因として、少子高齢化、地方における人口減少などがあげられていますが、空き家の増加は社会問題になっています。空き家が治安や景観の悪化、災害時の倒壊など私たちの生活に大きな影響を及ぼすからです。
そこで空き家の有効利用など空き家対策が進められていますが、そのひとつが「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」です。
親の家(実家)を相続したものの自分には別に家がありそこに住んでいる場合、相続した家は空き家なるケースが多いでしょう。しかし、空き家になった家を譲渡(売却)する際、一定の要件を満たしていれば譲渡所得(売却益)から3,000万円を控除できます。
従来、適用期間は2019年12月31日までとされていましたが、2023年12月31日までに延長されることになりました(この拡充については2019年4月1日以後の譲渡が対象です)。
適用の要件とは
「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」には、さまざまな要件が定められています。その主な要件は次の通りです。
まず、「人」の要件について
(1)売主は、被相続人居住用家屋及び相続開始直前においてその被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等を相続又は遺贈により取得した「相続人」であること。
(2)遺産分割協議前で家や土地が複数の相続人の共有になっている場合、売却には共有者全員の同意が必要。
建物や土地についても要件が定められています。その主な要件は次の通りです。
(1)相続開始の直前に、被相続人が一人暮らしをしていた建物であること(老人ホーム等に入居していた場合も対象になりますが、一定要件を満たした場合に限ります)
(2)昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
(3)区分所有建物登記がされた物件でないこと(つまり、マンション以外の家屋であること)
(4)相続開始直前において「被相続人居住用家屋」の敷地の用に供されていた土地等
(5)相続した後、相続人が貸付けの用又は居住の用に供していないこと(つまり、相続から譲渡までずっと空き家でなければならないということです)
(6)相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡(相続から3年目の年末までに譲渡を行うこと)
(7)1億円以下で譲渡したこと
(8)親子や夫婦など近しい関係にある人に対して売ったものでないこと
なお、この特別控除を使うためには、実際には建物を解体して更地にしてから売却することになります。というのも、重要な要件のひとつに「建物が現行の耐震基準に適合するものであること」という項目があるからです。
現行の耐震基準を満たすことができれば建物を解体する必要はありませんが、昭和56年以前に建てられた古い家屋を、現行の耐震基準を満たすものにするためには、売却前に耐震リフォームをする必要が出てきます。
しかし、昭和56年以前の家屋にわざわざ耐震リフォームを施して売却するのは現実的ではありません。解体するより更地にするほうが安く上がるでしょう。
適用を受けるための手続きの流れ
この特別控除を受けるためには、「被相続人居住用家屋等確認書申請書」を市区町村に申請し、「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、その他必要な書類と併せて税務署(国税局)に提出する必要があります。
添付書類は多岐にわたります。
簡単に言えば「昭和56年5月31日以前に建てられ」「被相続人が一人で住んでいた家を相続した相続人が、相続発生から3年以内に建物を解体して更地にし」「売却額1億円以下で第三者に譲渡した」ことを証明するための書類が必要になるわけです。
(1)家屋取り壊し後の敷地等の譲渡の場合は、次のような添付書類を添えて提出します。
1:被相続人の除票住民票の写し
2:相続人の住民票の写し(被相続人の死亡時以降2回以上転居している場合は、相続人の戸籍の附票の写し)
3:家屋またはその敷地等の売買契約書の写し
4:以下のいずれか
電気もしくはガスの閉栓証明書または水道の廃止届出書
相続人と媒介契約を締結していた宅地建物取引業者が、当該家屋の現況が空き家であることを 表示して広告していることを証する書面の写し
(2)家屋及び敷地等の譲渡の場合は、上記1~4の他に、次の書類が必要になります。
・敷地等の売買契約書の写し
・除却工事の請負契約書の写し
・取り壊しから譲渡までの使用状況の分かる写真
・敷地の相続人の固定資産課税台帳の写しまたは固定資産税の課税明細書の写し
「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」については、適用の要件が細かに定められていますし、申請にあたって必要な書類も多いですから専門家に相談されることをおすすめします。
2020年1月1日 : 相続する前に知っておきたい空き家の管理方法
家は、空き家のまま放置しているとさまざまなリスクが生じます。
今回は相続をする前に知っておくべき、空き家の管理方法についてご説明します。
空き家を管理しないことのリスク
親が亡くなり、遺産として親が住んでいた実家を相続する場合、自分もその実家に居住しているのであれば何の問題もありません。
しかし、すでに就職や結婚で別の生活拠点を構えてしまっていると、簡単に実家に帰ることもできず、やむをえず実家を空き家にしてしまうケースは少なくありません。もう実家に帰ることがないのであれば、売却という方法もありますが、いずれ実家に帰ろうという思いがある場合、それまでの期間はしっかりと管理する必要があります。
なぜなら建物は、人が居住している時よりも空き家にしているほうが劣化のスピードが速まるからです。
管理を怠っていると、万が一売却することになった場合も多額のリフォーム費用がかかります。
ほかにも、空き家を放置することで次のようなリスクが生じます。
【近隣住民とトラブルになるリスク】
上述したように、住居は空き家で誰も住んでいない状態になると急速に劣化が進みます。
場合によっては建物が腐朽し、台風などで強い風が吹いた際、建材が周辺の住宅に飛び散る危険もあります。また畳やじゅうたんにカビが生え、悪臭をまき散らしてしまうこともあります。
建物だけでなく、庭に植えた木が隣の家の敷地内にまで伸びてしまったり、雑草の手入れをしないことで虫が発生し近隣に迷惑をかけることもあります。最悪の場合は、訴訟問題にまで発展する可能性もあります。
【損害賠償責任を負うリスク】
空き家を放置することで迷惑をかけるのは、近隣の人たちだけではありません。
例えば劣化した建物が倒壊してしまい、たまたま付近を歩いている人を傷つけてしまった場合、当然ながらその家の持ち主が損害賠償の責任を負うことになります。
【特定空き家に指定されるリスク】
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、空き家を放置し適切な管理を怠った場合、自治体権限により、是正勧告や本人負担による修繕、解体撤去命令が執行されることになりました。
つまり長期間、空き家の管理をしない状態でいると、最悪の場合、解体されてしまい、将来的に住むことができなくなってしまうのです。しかも、解体にかかる費用はすべて本人負担となってしまいます。
解体までいかなくとも、空き家の土地の固定資産税の優遇措置が適用除外となり、土地の固定資産税が6倍となります。
空き家の管理方法
空き家を管理せずに放置することで、さまざまなリスクが生じることはご理解いただけたと思います。
以下に、空き家をしっかりと管理する方法として主なものを2つご紹介します。
(1)親族と協力して管理する
本来であれば、相続をした本人だけで管理することが望ましいのですが、住居を適切に維持管理していくためには、最低でも月に1~2回は訪問しなくてはなりません。
しかし遠方に住んでいたり、仕事が忙しくなかなか訪問できなかったりする場合、実家近くに住む親族に協力を依頼します。ただし親族だからといって無理やり協力を依頼するとトラブルの元になるため、感謝の気持ちだけではなく、ある程度のお金を支払うことも考えておく必要があります。
(2)管理代行会社に依頼する
空き家管理を専門に行う業者に依頼する方法です。本人や親族以外の第三者に実家の管理を任せることに、不安を感じるかもしれません。
しかしプロの手による管理であること、料金を支払って依頼するため、親族に依頼するよりも気を遣う必要がないといったメリットもあるため、親族に依頼できない場合は検討する価値は十分にあります。
所有や管理にかかる費用は?
最後に空き家を所有、管理する際にかかる費用についてご紹介します。
【固定資産税】
市区町村によって多少異なりますが、一般的には固定資産税評価額の1.4%を毎年納付します。
【都市計画税】
都市計画法による市街化区域に所在する土地・建物を課税対象とする税金で、これも税率は自治体によって異なりますが、一般的には固定資産税評価額の0.3%を毎年納付します。
【震災保険】
火災や震災に備えた保険です。一般的には年間で数万円かかります。
【水道光熱費】
誰も住んでいなくとも、管理を行っていくためには契約を継続している必要があります。ほぼ使わないため、基本使用料のみで年間、1~5万円程度かかります。
【修繕費】
住居の劣化による修繕費です。劣化具合や修繕箇所によって費用は大きく異なります。数万円で済む場合もあれば、外壁の修繕や屋根の修繕など100万円以上かかるものもあります。
【庭の手入れ、管理依頼費】
庭がある場合、その手入れにも費用がかかります。また前項で触れた、空き家管理代行業者に依頼した場合は、その委託料もかかります。
空き家の維持・管理には、労力と費用がかかります。相続で空き家を引き継ぐ場合は、将来その家に自分が住むのか、それまでは賃貸に出すのか、別荘のようにして空き家管理をするのか、売却するのかなど、その扱いについてしっかりと検討していきましょう。
2019年12月21日 : 相続した空き家で賃貸経営! 貸し出すためのリフォームのポイントとは
親から相続で引き継いだ実家などに住まない場合、空き家として放置していると劣化が進みます。
また空き家でも、固定資産税は支払わなければなりません。空き家のままにせず、賃貸に出して活用することで家に命が吹き込まれます。また、家賃収入を得ることもできます。
今回は空き家で賃貸経営する際のメリットやリフォームのポイントをご紹介します。
相続した空き家の活用方法
親が亡くなり実家を相続したものの、さまざまな事情から実家には住むことができない場合であっても、相続した以上は管理責任が生じます。
また固定資産税の支払い義務もあるため、場合によっては相続放棄を検討する人も多いのではないでしょうか。
しかし、長らく親が住んでいた土地を手放すことに申し訳ない気持ちや、寂しさを感じることもあるでしょう。そういった場合、空き家を借家にして賃貸経営をする方法があります。
総務省が5年ごとに発表している住宅・土地統計調査(平成25年)によると、平成25年の空き家数は820万戸(全戸数の13.5%)で平成20年から63万戸も増加しています。
また野村総合研究所が2014年9月に公表した2023年の空き家率のシナリオによると、世帯数が減少し住宅の除却・減築が進まなければ21%まで拡大するとしています。
年々、空き家が増加している理由は決して一つではありませんが、そのなかでも少子高齢化や核家族化が大きな要因と考えられます。別の地域で家庭を持ち生活基盤をつくってしまったため、実家を相続したものの、もう実家へは帰れないといった人は多いのではないでしょうか。
実家などを空き家のまま放置しておくと、どんどん劣化していきます。そして、その劣化が進み荒れてくると特定空き家に指定され、土地にかかる固定資産税の優遇措置が適用されなくなるうえ、最悪の場合は建物を強制解体されてしまいます。こうした事態を避けるためには、何かしらの方法で空き家を活用しなくてはなりません。
空き家の活用方法として考えられるものは大きく2つあります。
ひとつは相続した本人が別荘のような形で定期的に利用する方法です。この方法であれば、親が長らく住んだ家を自身の手で管理することができます。自分がかつて住んでいた家なので、当時の思い出をそのまま残すという意味では唯一の方法といえます。
そしてもうひとつの方法が、賃貸物件として第三者に貸し出す方法です。この場合、相続した本人が自らの手で管理することは難しくなりますが、住む人がいるため、空き家のように急激に建物が劣化していく心配はありません。
空き家で賃貸経営をするメリット
自分で定期的に訪問して管理する、もしくは賃貸物件として第三者に貸し出す。
相続人のおかれた状況によってどちらを選択するのかは異なりますが、基本的には賃貸物件として貸し出すほうがメリットも多く、相続人本人の負担も軽減されます。
では、空き家を賃貸物件にすることのメリットとはどういったものなのでしょう。
【毎月賃料収入を得ることができる】
本人が定期的に訪問して管理する方法では、修繕費や維持費、そして固定資産税の支払いなど基本的に支出のみで収入は一切ありません。
しかし賃貸物件にすれば、毎月賃料収入を得ることができ、その賃料を家の管理や税金の支払いに回すことができるようになります。
【経年劣化の速度を抑えることができる】
建物は空き家になってしまうと、人が住んでいるときに比べて経年劣化のスピードは速くなります。
賃貸物件にした場合、もちろん大きな修繕、改善は相続人の負担となりますが、日々の掃除や簡単な補修は賃借人が行うため、経年劣化の速度が抑えられるうえ、管理の手間も軽減されます。
【最終的には自分で住むことも可能になる】
今は仕事の都合などで実家に住むことはできないものの、将来的には実家に帰りたいと思っている場合、賃貸住宅にしていればゆくゆくは自分たちで住むこともできます。賃貸経営がリタイア後の資金稼ぎにもなります。
空き家を物件として貸し出すためのリフォームのポイント
空き家を賃貸物件として貸し出す場合、家の劣化具合にもよりますが基本的にはある程度のリフォームは必要になります。そこで、空き家を賃貸物件にするためのリフォームのポイントをご紹介します。
例えば親の存命中に水まわりなどをリフォームしている場合、改めて大きなリフォームをする必要はありません。最初に大規模なリフォームを施さなければ、初期費用が抑えられる分、賃料も安く設定できるため、貸主、借主双方にとってお得な物件となります。
存命中はリフォームをしておらず、そのまま賃貸物件にするのが難しい場合、予算があれば大幅にリフォームをすることで、借主を見つけやすくなりますし、賃料も高く設定することができます。しかしそれほど予算がない場合のリフォームのポイントは、「外観」「水まわり」の2つに集中してお金をかけることです。
外観は家の顔ともいえる部分ですので、壁がひび割れていたり、汚れていたりするだけで賃貸物件としての価値は大きく下がります。また水まわりは快適な生活を送るうえで、最も重要な部分です。
キッチンやトイレ、浴室に清潔感がなかったり使い勝手が悪かったりすると、借主の印象も悪くなりますので、特にこの2カ所に関しては、きちんとリフォームを行うことをおすすめします。
2019年12月11日 : 手続きはどうやる? 相続放棄でいらない空き家を処分したい
今回は、マイナスの遺産や空き家がある場合に相続放棄をすることのメリット・デメリット、手続き方法についてご説明します。
空き家の相続放棄はなぜおこるのか
遺産相続で相続するものは、現金、証券、美術品や骨董品、土地・不動産などがありますが、マイナス遺産も相続しなければならないことはご存じでしょうか?
マイナス遺産とは、簡単にいえば被相続人の借金や負債のことですが、場合によってはマイナス遺産のほうが多い場合もありえます。またもう一つ問題となるのが、被相続人が亡くなってしまい、誰も住まなくなってしまった空き家の相続です。
空き家の相続放棄がなぜおこるのかを知るには、まずなぜ空き家が増えているのかを知る必要があります。
日本において空き家が増えている理由は一つではありませんが、そのなかでも大きなものとして、少子高齢化が挙げられます。そして少子高齢化に伴って進んでいる高齢者世帯の増加こそ、空き家が増加している最大の要因といえるのでしょう。
厚生労働省が毎年発表している「国民生活基礎調査(平成29年)」によると、高齢者のみの世帯数は年々増加の一途をたどっていて、平成29年には13,223件となっています。平成元年は3,057件ですから29年でその数は4倍以上も増えているのです。
そして高齢者のみの世帯が増えているということは、その子どもたちはすでに家を出て就職をしたり結婚をしたりして別に生活基盤を築いていることになります。
つまり高齢の親が亡くなっても、子どもたちには生活する場所があるため、故郷の実家などに戻ることが難しく、その結果として空き家が増えてしまうのではと考えられます。
相続した空き家をそのまま放置すれば、固定資産税の負担があるだけではなく、定期的に管理をしないと行政に特定空き家の指定をされ、場合によっては解体の費用まで負担しなくてはならなくなります。
相続してすぐに売却ができればよいのですが、売却するためにもリフォームやリノベーションをするための費用は必要になります。こうしたことを避けるため、相続放棄をするケースが増えているのです。
相続放棄することのメリット、デメリット
親が長らく住んでいた家ではあるものの、さまざまな事情で空き家にせざるをえない場合、また親の遺産として借金や負債がある場合は、相続放棄をすることで多くの負担を回避することが可能になります。
これこそが、相続放棄の最も大きなメリットです。またそれ以外にも万が一、相続人同士で遺産トラブルが起きたとしても、巻き込まれてしまうことがなくなることも、相続放棄のメリットといえるでしょう。
しかし相続放棄はメリットばかりではありません。具体的には次のようなデメリットもあります。
【プラスの遺産も相続できなくなる】
上述したように相続放棄は空き家の管理や借金・負債から解放されることがメリットですが、同時にプラスの遺産を相続することもできなくなります。
相続放棄はすべての相続を放棄するという意味であり、プラスの遺産だけは相続するといったことはできません。
【相続財産管理人が決まるまでは管理責任が残る】
相続放棄をすることで、空き家の管理から解放されるとしましたが、実は必ずしも相続放棄をするだけで空き家の管理責任がなくなるわけではありません。
ほかの相続人が代わりに相続してくれれば問題はありませんが、それができない場合は、家庭裁判所に相続財産管理人の選任請求をする必要があります。そして相続放棄をしたとしても、新たな管理人が選任されるまでは、責任をもって管理しなければなりません。
相続放棄の手続き
相続放棄をすることのメリット、デメリットを考えたうえで、それでも相続放棄をする場合は、相続が始まったことを知った日から起算して3カ月以内に手続きをしなくてはなりません。
相続放棄の手続きは、被相続人が最後に住んでいた場所を管轄している家庭裁判所で行います。必要な書類は、「相続放棄申述書」「相続放棄をする人の戸籍謄本(もしくは除籍謄本か改正戸籍謄本)」「被相続人の住民票除票、または戸籍の附票」です。
これらに必要事項を記入したうえで、家庭裁判所に提出します。数日から2週間以内に照会書が届くので、そこに記載されている質問事項に回答して返送し、問題がなければ完了です。
なお必要な費用は収入印紙代800円と、申述人一人につき150~460円の郵便切手代です。
放棄した不動産はどうなるか
最後に、放棄した不動産はどうなってしまうのかについてご説明します。
上の段落でも書いたように、相続放棄をして、引き継ぐ人がいない不動産は、第三者である相続財産管理人が管理を行います。
そしてその管理費用は、相続財産の中から支払いますが、足りない部分は相続放棄をした本人が負担しなければなりません。
なお、相続財産管理人は不動産の精算を行い、その後は国庫に引き継がれます。
しかし、国がそういった不動産を引き取ることはほとんどありません。
理由は、相続放棄されるような活用の用途が見込めない不動産は、国もほしくないからです。そうなると、相続財産管理人の管理業務は終了しないため、相続放棄をしたものの、管理費用を支払い続けなければなりません。
もし被相続人に借金や負債といったマイナス資産がない場合は、空き家になったとしてもそのまま相続をして、自分が管理をしたほうが相続財産管理人の管理費を負担するよりも安く済むケースもあります。そのため空き家になったからといって安易に相続放棄をするのではなく、専門家の意見も参考にしながら検討されることをおすすめします。
2019年11月1日 : 相続税節税に生前贈与を検討するなら3年内加算ルールに要注意
2015年に施行された相続税及び贈与税の税制改正で、遺産にかかる基礎控除額が減額されました。この改正により、それまでは相続税は無縁と思っていた人にとっても、考えざるをえない状況となっています。
そこで今回は相続税負担を少しでも軽減するための方法として注目されている生前贈与について、その概要と注意すべき点についてご紹介します。
節税対策としての生前贈与が注目される背景
あまり考えたくはないことではありますが、親が高齢になってきたら検討しなくてはいけないことの一つとして遺産相続があります。
2015年に施行された相続税及び贈与税の税制改正により、相続税課税の対象となる被相続人はそれまでに比べ大幅に増えています。
国税庁が毎年公開している「相続税の申告状況について(2017年分)」を見ると、税制改正前の2014年に課税対象となった被相続人の割合は4.4%ですが、2017年には8.3%と約1.9倍に増えています。
遺産相続といえば、親の遺産を譲り受けることができるため、頭を悩ませる必要はないと思うかもしれません。しかし現在では遺産を相続することで、かえって自分の資産を減らすことにもなりかねないケースも増えています。
これを回避する方法として注目を集めているのが生前贈与です。言葉自体を知っている人は多いと思いますが、具体的にどういったものかはご存じでしょうか?
生前贈与とは、親が亡くなってしまう前に財産の贈与を行うものですが、相続に比べ被相続人の意思を強く反映できることや、相続税と贈与税では税制や税率が異なることから、将来的に相続税を支払う相続人の負担を軽減する効果があります。
もともと、相続税の節税対策として利用されることの多かった生前贈与ですが、なぜ今新たに注目を浴びるようになったのか。それは2015年に施行された相続税及び贈与税の税制改正が大きく影響しています。
この税制改正では、相続税の基礎控除額が5,000万円から3,000万円に、そして法定相続人比例控除も1,000万円×法定相続人の数から、600万円×法定相続人の数に引き下げられています。
これだけでも「相続ではなく生前贈与に」と思われるかもしれませんが、それだけではなく、「特別贈与財産」が新たに設けられたことも生前贈与が注目される要因です。
この特別贈与財産とは、20歳以上の成人が直系尊属から贈与を受ける場合、金額が410万円以上であれば一般贈与に比べ税率が優遇されるものです。特に基礎控除額を超える遺産総額があるケースでは、相続税よりも贈与税のほうが税負担が軽くなることで、これまで以上に生前贈与が相続税の節税対策として利用されるようになっているのです。
生前贈与を検討するうえで気をつけたい3年加算ルール
相続税の節税に大きな効果を発揮する生前贈与ですが、デメリットがないわけではありません。
例えば生前贈与でも現金ではなく土地や不動産を贈与する場合、登録免許税や不動産取得税がかかってしまいます。またもう一つ、気をつけなければいけないのが3年加算ルールです。
3年加算ルールとは、相続税の節税を目的に親が余命宣告を受けてから急に生前贈与を行うといったことを防ぐためのものです。
具体的には、相続権を持つ直系卑属に対して生前贈与を行ってから3年以内に、被相続人である本人が亡くなって相続が発生した場合、生前贈与を行った額がそのまま相続財産に加算され、相続税の課税対象になるというルールです。
例えば6,000万円の財産を持っている親が相続権を持つ子に毎年、贈与税が非課税になる100万円を5年間にわたって贈与していたとします。その親が亡くなった場合、その時点での財産が5,500万円でこれを子がすべて相続するとして、相続税は5,500万円に対してではなく、贈与を行っていた3年前からの額300万円を足した5,800万円から、基礎控除額を差し引いたものに対して課税されます。
ただし毎年の贈与額が贈与税課税額を超えて贈与されていた場合、その時点で支払っていた贈与税は差し引いてうえで相続税の計算をします。
税負担軽減を考えるのであれば早めの決断を
人生、何が起きるかわかりません。
病気ではないとしても、事故により亡くなってしまう可能性もゼロではありません。そういった意味で、生前贈与によって相続税対策を行いたい場合、できるだけ早い決断をすることがもっとも重要だといえます。
ただ3年加算ルールを回避する方法は、できるだけ早めに贈与を開始する以外にも方法があります。例えば相続権のある子ではなく、孫に贈与を行えば3年加算ルールは適用されません。さらに孫であれば被相続人の直系卑属になるため、特別贈与財産の税率が適用され、より節税効果があります。
もう一つの方法は、贈与を行う相手を増やすことです。贈与税が非課税になるのは、合計金額ではありません。つまり1人に対し、300万円を贈与すれば贈与税がかかりますが、3人に100万円ずつ贈与すれば非課税となり、贈与税はかからないのです。もちろんそれぞれの方法にも条件はありますので、専門家に相談のうえ、早い決断をすることが節税のポイントといえるでしょう。